オーガニックとは何?意味や基準を正しく知ろう
作成日: 2021/01/12
「オーガニック」という表示を見て悪い印象を持つ人はあまりいないでしょう。しかし、それがなぜなのかと問われると、理由をはっきりと答えられる人は案外少ないのかもしれません。。この機会に正しい意味を知り、納得したうえで選べるようになりましょう。この記事では、オーガニックの意味とその基準などについて解説します。
オーガニックってどういう意味?
オーガニックとは、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないで、自然界の力で生産された農産物、畜産物およびその加工品のことです。同じようなものに「有機食品」と呼ばれるものもあるため、何が違うのかと疑問を持った人もいるでしょう。実はオーガニックと有機食品は同じものを指し示す言葉で、日本語と英語という以外の違いはありません。
オーガニックと呼ばれる食品には専用のJAS規格があり、有機JASと呼ばれています。そして、農産物、畜産物、加工食品それぞれに異なる基準が設けられています。たとえば、農産物の場合、栽培に化学肥料や化学合成した農薬は使用しないのが原則です。
そのうえで、種まきや植え付けに使用する土壌は、栽培中だけでなく、その2年以上前(多年生作物の場合は収穫前3年以上前)から化学肥料や農薬の使用はしない、遺伝子を組み換えた種や苗は使用しないという決まりがあります。
畜産物の場合は、有機飼料を与え、ストレスを与えないように飼育したものでなければなりません。病気予防の目的で抗生物質を与えたり、遺伝子組み換え技術を使用したりしたものは対象外になります。
加工食品の場合は、水と食塩以外の原材料のうち、95%以上が有機農産物、有機畜産物、有機加工食品であることが条件です。そのうえで、化学合成された添加物や薬剤の使用を避けることや、遺伝子組み換えの技術を使用しないことなどが決められています。
オーガニック=無農薬ではない
オーガニック表示が付いている農産物は、すべて無農薬で栽培されたものだと思われがちです。しかし、完全な無農薬で栽培されていなくても、基準を満たしていればオーガニックと表示することができます。ですから、オーガニックと無農薬栽培はイコールの関係ではありません。
そもそも、有機JAS規格には、人体にとって安全か、健康的かということに対しての記載がありません。自然にとって優しいか優しくないかという点が重視されている規格です。農業をするうえで自然循環機能を維持増進することが目的なので、環境への負荷を低減するためにはどこまで抑える必要があるかという視点で基準が設けられています。
オーガニックと表示するためには、化学合成された農薬の使用は避けるのが原則です。しかし、農薬は化学合成されたものしかないわけではありません。天然由来の農薬、例えば微生物の力を利用した殺菌剤などは有機農薬として使用できます。ですから、オーガニック食品だからといって、すべてが無農薬で栽培されているわけではないのです。
ここで、農薬使用を抑えて生産した農産物であることを示す「特別栽培農産物」についても触れておきましょう。特別栽培農産物の標記をする際には、ガイドラインを守らなければなりません。まず、節減対象農薬と化学肥料の窒素成分量を、それぞれを農産物の生産地域における慣行レベルと比較します。要は、それぞれの地域で比較するため、生産地域ごとに異なる基準になるということです。
次に、節減の対象となっている農薬は、使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量についても50%以下という基準を満たしていることが求められます。つまり、特別栽培農産物であっても、節減対象以外の農薬を使うことができ、化学肥料も窒素成分量が基準以内であれば使えるということです。このように、オーガニックという言葉は無農薬を意味するものではありません。
日本でのオーガニック食品の基準
オーガニック食品というためには、基準を満たしていなければならないことを先に述べました。では、日本でオーガニック食品というためにはどのような基準を満たしていればよいのでしょうか。ここからは、日本でのオーガニック食品の基準について解説します。
農林水産省の基準をクリアする必要がある
農作物や食品に「オーガニック」「有機」と表示するためには、農林水産大臣が制定した日本農林規格(JAS規格)をクリアしなければなりません。日本には有機JAS制度というものがあり、それによってオーガニック、有機栽培と表示するための定義が決められているということは、先に述べた通りです。
野菜や果物は、化学肥料や化学合成農薬をできるだけ避けて育てたものでなければなりません。そのうえで、遺伝子組み換え技術はしいないことが求められます。さらに、種まきや植え付けに使用する田畑の土も、2年以上前から栽培中まで有機肥料が使われていることが必要です。
つまり、栽培中に化学合成肥料や農薬が使われていなくても、前年あるいはその前の年に使われていた場合は基準から外れることになります。また、田畑が基準を満たしていても、遺伝子組み換えした種や苗から育てた場合も対象外です。2020年7月16日からは、有機の畜産物及び畜産物加工食品についてもJASマークが必要となりました。
オーガニック表示が認められるものとは?
基本的に、オーガニック表示が認められるのは、日本農林規格に規定されている、有機JAS規格に適合しているものです。しかし、いくら規格に適合していても、認定を受けた事業所が有機JASマークを添付したものでなければ、オーガニックや有機という言葉を使ってはならないことになっています。
有機JASマークの表示対象は、農産物、畜産物、加工食品、飼料です。そして、それらを扱う生産者、流通業者、加工業者、販売業者、畜産品の場合はと殺業者も有機JAS認定の対象です。認定を受けた業者が有機JASマークを付けたものだけが、オーガニック、有機と表示することが許されます。
つまり、実際に化学肥料を一切使っていなくても、有機JASマークの認定を受けていなければ、オーガニック、有機という言葉を使うことができないのです。また認定を受けた業者の調査として、登録認定機関は、認定を行った生産農家や製造業者が認定 後も有機JAS規格に基づいて生産を行っていることを確認 するため、最低1年に1回、調査を行ように定められています。
輸入されたものについては、輸入元の国が日本と有機同等性の取り決めを行っていることが表示の前提になります。それ以外の地域から入ってきたものは、たとえ基準を満たしていてもオーガニック、有機という表示はできません。また、輸入食品に関しては、輸入業者にも有機JAS認定が必要です。認定のない輸入業者の手によるものも表示が許されません。
出典:農林水産省「有機食品の検査認証制度」(https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html、2021/1/12)
正しい認識でオーガニックを選ぼう
正しい定義や表示の意味などを知ることによって、オーガニックに対する認識が変わったという人もいるのではないでしょうか。地球や自然環境に対する負荷を減らして栽培、生産されたオーガニックの食品を、どれほど信頼するかは個々の判断によります。オーガニックの正しい意味を理解し、納得したうえで上手に取り入れていきましょう。