「江戸前寿司」とはどんなお寿司?関西寿司との違いも解説
作成日: 2024/05/07
更新日: 2024/05/14
寿司は日本を代表する食文化の一つ。その中でも東京を表す「江戸」という言葉が入った「江戸前寿司」というのは、どのような特徴を持っているのでしょうか。また、関西地方の関西寿司とはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は江戸前寿司と関西寿司の違いについて、歴史から具体的な作り方までを詳しく解説していきます。
お寿司の歴史
日本の寿司の歴史は古く、今から1000年以上も前までさかのぼります。
しかし、現在私たちが食べているような握り寿司の形になったのは、江戸時代に入ってからのことです。江戸では町人文化が栄え、現在の寿司の原型ともいえる「江戸前寿司」が誕生しました。
一方で、大阪をはじめとする関西地方では、それとは違った「関西寿司」のスタイルが確立されていきました。
江戸前寿司
江戸前寿司とは狭義の意味では「東京湾で取れた鮮魚で作ったお寿司」のことを指し、広義の意味では東京(旧江戸)で生まれた「伝統的な握り寿司」のことを指します。
「伝統的な握り寿司」には現在のお寿司の原型である、シャリの上にネタを乗せたお寿司も含まれます。これは、せっかちな江戸っ子たちが、ネタとシャリを同時に食べられるように作ったそうです。
しかし、当時は今のように保存の技術や運送の技術がなかったため、新鮮な魚以外は、タレで煮詰めたり、酢や塩で締めるなどして、持ちを長くして販売していたそうです。
では、どのような調理法があったのか、詳しく見ていきましょう。
酢〆
酢〆は比較的古い調理法です。主に光り物である、コハダやキス、サバ、アジ、サヨリなど、以前は酢で〆てシャリにのせたものが提供されていました。
醤油漬け
主にマグロなどを漬けることが多く、1日の時間をかけてじっくり漬けることで、ねっとりとした食感のマグロを提供するなどしていました。
煮物
ハモ、シャコなどは茹でて(湯通しして)鮮度を保っています。今でもハモはシャコをさっと茹でたネタで提供されることが多いですね。
当時は、このように工夫を凝らして、お寿司を提供しており、今なおその調理法が使用されているネタもあります。
関西寿司
一方、関西寿司は大阪を中心に発達した寿司文化を指します。大阪寿司は江戸時代よりはるか昔の平安時代にはその調理法が確立されていました。
関西で多く食べられたのは、箱寿司や棒寿司の類です。
特に和歌山県のなれ寿司などは今でも伝統的な作り方をしています。なれ寿司はサバを1ヶ月程度塩漬けしたあと、1日程かけて塩抜きを行い、殺菌作用のある葉でかっちりと巻き、作られます。
このように長期保存ができるような寿司の調理法が多く発展しました。関西では、長期保存にサバやアジ、サンマといった魚が使われることが多かったそうです。
その後、瀬戸内の魚の他、うなぎやえびなどが寿司飯とともに、木枠の推し型に敷き詰められた箱寿司に発展していきました。これらが、後にバッテラ寿司やのりまきなどの形で普及していきました。
シャリの味付けの違い
寿司の個性は何といってもシャリ(酢飯)の味付けから生まれます。シャリの味付けが異なれば、そのお寿司の印象はがらりと変わってきます。江戸前寿司と関西寿司は、まさにこのシャリの味付けが大きく異なっているのが特徴です。
江戸前寿司のシャリ
江戸前寿司のシャリは、控えめな酸味とさっぱりとした味わいが特徴です。なぜならば、ネタを醤油漬けしたり、タレで似たりしているため、控えめな味付けのシャリの方がバランスがよかったからです。
関西寿司のシャリ
一方の関西寿司のシャリは、江戸前寿司に比べてはっきりとした甘みがあります。
関西の棒寿司や箱寿司は作ってからすぐ食べるのではなく、時間を置いて食べることが多かったそうで、砂糖を多めに使っていました。
その名残があり、関西のシャリは今も江戸前寿司と比べると甘めの味わいになっています。
現在の江戸前寿司と関西寿司の特徴
寿司と言えば何よりもネタ(具材)が重要です。現在は保存方法・運搬技術などが発展し、新鮮なネタをどこでも食べられるようになりました。
では今、江戸前寿司と関西寿司にどのような特徴の違いが出てきているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
江戸前寿司のネタの特徴
江戸前寿司では新鮮なネタで作る握り寿司はもちろん、マグロ漬けや煮アナゴなどの伝統的なお寿司も楽しめます。
中でも人気のメニューであり、お寿司やさんの「格」に関わるネタといえば「マグロ」です。
近年では、新鮮なマグロを提供するだけでなく、熟成させることで旨みを引き出す「熟成寿司」も人気です。現在の江戸前寿司では、新鮮さだけを売りにするのではなく、ネタを寝かせたり、調理するなど、「一手間加えた調理で魚の旨みを引き出す」という寿司屋さんが多いようです。
関西寿司のネタの特徴
一方関西寿司はマグロよりも、鯛などの白身魚が重要視されることが多いです。
これは東京湾付近に比べて、瀬戸内は潮の流れが早く新鮮な白身魚がたくさん獲れるからだそうです。
一手間加える江戸前寿司と比べ、関西では新鮮な状態の魚をすぐに締め、「新鮮な魚そのままの旨みを楽しむ」ことが大事とされ、醤油以外にも塩のみで白身魚を提供するお寿司屋さんもあるんですよ。
江戸前寿司は現在の握り寿司の原型!
こちらの記事では、江戸前寿司はどのようなお寿司のことか、また、関西の寿司とはどのように違うのかについてご紹介しました。
中でも江戸前寿司は、現在の握り寿司の原型になっている歴史のあるお寿司でした。一方で歴史や食文化が違う関西寿司も江戸前寿司とはまた違った魅力があります。機会があれば、どちらの魅力も知った上で、食べ比べてみてはいかがでしょうか?