脂質とは?中性脂肪やコレステロールも脂質の種類?
作成日: 2020/11/30
体に悪いイメージのある脂質。脂質にはどんな働きがあるのでしょうか?今回はそんな脂質について種類や一日の摂取量等を解説します。
1.脂質とは
脂質は水に溶けず、有機溶媒に溶ける有機化合物の総称で、炭水化物やたんぱく質と同じく、体内でエネルギーの源となる栄養素です。エネルギー源になるだけではなく、細胞膜を構成する成分や生理活性物質としても働いています。エネルギーの即戦力である炭水化物に対し、脂質は蓄えられた中から必要な時にエネルギー源となります。また、脂溶性ビタミンやカロテノイドの吸収を助けます。生体成分において水分の次に多く含まれており、中性脂肪等の「単純脂質」、リン脂質やリポたんぱく質等の「複合脂質」、脂肪酸やコレステロール等を含むステロイド等の「誘導脂質」に大きく分けられます。
食べ物から体内に取り込まれた脂質は、主に小腸で消化されます。脂質の種類ごとに取り込まれ方も変わり、効率の良いエネルギー源として使われたり、生理活性物質の原料として働いています。
余った脂質は、中性脂肪として体内に蓄えられますが、多く摂り過ぎれば肥満を招き、生活習慣病の原因となります。多くの食品では、脂質の大部分を中性脂肪が占めています。
2.中性脂肪とは
中性脂肪は肉、魚、食用油等、食品中の脂質や体脂肪の大部分を占める物質であり、単に脂肪とも呼ばれています。構成成分である脂肪酸は、動物性脂肪では飽和脂肪酸が多く、バターやラードのように常温では固体として存在します。それに対し、植物性脂肪では不飽和脂肪酸が多く液状です。
中性脂肪は人や動物にとって重要なエネルギー源であり、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の摂取にも不可欠ですが、摂取し過ぎると体脂肪として蓄えられて肥満になり、生活習慣病を引き起こす原因となります。血中の中性脂肪が150mg/dL以上の高トリグリセリド血症は、メタボリックシンドロームの診断基準でもあります。
中性脂肪のうち、自然界に最も多く存在するのは、トリアシルグリセロールです。
3.コレステロールとは
コレステロールは、細胞膜の構成成分や胆汁酸、各種ホルモンの前駆物質として重要です。約2~3割が体外から取り入れられていますが、約7~8割が糖や脂肪を使って肝臓等で合成されています。
血液中では、たんぱく質等と結合したリポたんぱく質として血液中に溶け込んで全身を移動し、合成されたコレステロールを末端組織に運搬する低密度リポたんぱく質(LDL)、余分なコレステロールを肝臓に運搬する高密度リポたんぱく質(HDL)等があります。このLDLが悪玉コレステロール、HDLが善玉コレステロールです。
この2つのコレステロールのバランスが崩れて血液中のコレステロールが過剰になると脂質異常症となります。また、血中コレステロール濃度が高いと高脂血症や動脈硬化、胆石等が起こりやすくなりますが、濃度が低いと免疫力の低下を招き、貧血や脳出血等を起こしやすくなるため注意が必要です。
コレステロールを多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少し、摂取量が少なくなるとコレステロール合成は増加して末梢への補給が一定に保たれるようにフィードバック機構が働きます。このため、コレステロール摂取量と血中コレステロール値との間には関連はあるものの、コレステロール摂取量がそのまま血中総コレステロール値に反映されるわけではありません。
【LDLコレステロールとは】
LDLコレステロールは、悪玉コレステロールといわれています。肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶのですが、増え過ぎると血管壁にコレステロールがたまり、活性酸素の影響で過酸化脂質になります。これが蓄積すると動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳梗塞、狭心症等が起こりやすくなります。
LDLコレステロールが多く含まれる動物性脂質は、一般的に摂取し過ぎる傾向があるのでなるべく控え、HDLコレステロールを増やす効果のある青魚(DHA/EPA)や、コレステロールを減らす効果のある植物性脂質をバランス良く摂取しましょう。また、LDLコレステロールの酸化を防ぐため、抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンE、βーカロテン、ポリフェノール等も摂取するといいですね。
【HDLコレステロールとは】
HDLコレステロールは、善玉コレステロールといわれています。増え過ぎた余分なコレステロールを回収したり、血管壁にたまったコレステロールを取り除いて肝臓に戻してくれます。余分なコレステロールを回収して動脈硬化を抑えてくれるコレステロールです。
LDLコレステロールを減らしてHDLコレステロールを増やすには、毎日の食生活が大切になってきます。豆腐や納豆等に含まれる大豆たんぱくはコレステロールの吸収を抑える働きがあります。また、オリーブオイルに含まれるオレイン酸、あじやさんま等の青魚に含まれるDHAやEPA等の不飽和脂肪酸はHDLコレステロールを下げずにLDLコレステロールを減らしてくれる働きがあります。
運動不足や喫煙は、HDLコレステロールを下げる原因であるとされています。
血中のHDLコレステロールが40mg/dL未満の低HDLコレステロール血症は、メタボリックシンドロームの診断基準でもあります。
4.脂質の一日の摂取量は?
脂質は一日にどれくらい摂取してもいいのでしょうか。食事摂取基準において、脂質は生活習慣病予防のために目標とすべき摂取量やその範囲を示す「目標量」が定められています。
男性、女性とも脂質の目標量は、18歳以上でエネルギー比率20~30%となります。他の栄養素だとgやmg表記が多いのですが、脂質の場合は総エネルギー摂取量に占める割合で決まります。
飽和脂肪酸の目標量は男性、女性ともエネルギー比率7%以下となります。
nー6系脂肪酸は科学的根拠が得られないため目標量ではなく目安量が定められており、男性は18~29歳で11g/日、30~64歳で10g/日、65~74歳で9g/日、75歳以上で8g/日となり、女性は18~74歳で8g/日、75歳以上で7g/日となります。
nー3系脂肪酸も同じく目安量が定められており、男性は18~49歳で2.0g/日、50~74歳で2.2g/日、75歳以上で2.1g/日となり、女性は18~49歳で1.6g/日、50~64歳で1.9g/日、65~74歳で2.0g/日、75歳以上で1.8g/日となります。
脂質には食事の他に運動習慣等も大切!
脂質にはいくつか種類があることがわかりました。コレステロールは悪いイメージがあるかもしれませんが、HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収してくれたりするいい働きをすることがわかりました。そのためには食事はもちろん、運動や禁煙等も関わってくるので生活習慣全体が大切になりますね。
【出典】
・eーヘルスネット:脂肪 / 脂質、中性脂肪 / トリグリセリド、コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、メタボリックシンドロームの診断基準
・農林水産省:脂質による健康影響
・食品安全委員会:生活の中の食品安全−脂質との付き合い方−
・食事摂取基準(2020年版)
・日本食品標準成分表2015年版(七訂)