練り切りとは?代表的なモチーフや作り方もご紹介
作成日: 2021/07/19
和菓子屋などに並んでいる美しい「練り切り」。
季節の植物などを象った芸術的な和菓子で、最近ではキャラクターをモチーフにしたものも販売されています。そんな練り切りとはどのようなお菓子なのでしょうか。
この記事では、練り切りの特徴や似ている和菓子との違い、練り切りの作り方をご紹介します。
細かい装飾が多く難しそうな練り切りですが、コツをつかめばご家庭でも作ることができますよ。
練り切りについて
練り切りとは、どのような和菓子なのかみていきましょう。
練り切りとは
練り切りは和菓子の一種で、練り切りあん(白あん)を主原料とする生菓子です。
練り切りの正しい名前は「練り切りあん」といい、一般的には略称で「練り切り」と呼ばれています。
華やかな見た目としっとりとした口当たり、上品な甘さが特徴で、古くからおもてなしの場に用いられている上生菓子です。
練り切りあんは、白あんに砂糖、山の芋やみじん粉などのつなぎの食材を加えて調整し、練って作ります。
それに色素を加えて色をつけ、主に季節の植物や風物を象った細工をして仕上げます。
京都では練りきり生地のつなぎに、つくねいも(やまといも)を使うなど、地方や和菓子店によって使われるつなぎに特色があります。
つなぎは細工をしやすくするために加えますが、入れれば入れるほど生地は硬くなる傾向にあります。
また、職人が作る和菓子には「練り切り」のように菓子の種類を示す名前のほかに「菓銘(かめい)」という作品名のような名前がつけられています。
ひとつひとつ丁寧に作られる練り切りからは、高い芸術性が感じられます。
上物と並物
練り切りには上物と並物があり、材料に違いがあります。
上物は食材に、白小豆、白ササゲ、白インゲン、エビイモ、ヤマトイモ、百合根を加えて作るものです。
上品な味わいが楽しめますが日持ちがしないため、茶席や儀礼に合わせて作られることが多くなっています。
一方、並物は日常用のもので、つなぎに求肥をはじめ、手亡豆やナガイモを使用します。
特に求肥は加工がしやすくご家庭でも使いやすいため、練り切りを手作りする際には活用したいつなぎです。
練り菓子との違い
練り菓子は、粉状の材料やあん、固形の材料と液体状の材料を練り上げて作る、粘土状の菓子全般を指します。
練り菓子は水分量が多く、その水分量によってさらに生菓子や半生菓子に分けられます。
練り切りは、練り菓子の一種で、そのほかに求肥やこなしなども練り菓子に含まれます。
こなしとの違い
練リ切りと似たお菓子に、こなしがあります。
こなしは、関西ではなじみ深いお菓子のひとつです。
練り切りの生地は、白いこしあんをベースに求肥などのつなぎを入れて作りますが、こなしは白あんに小麦粉などを混ぜて蒸し、砂糖を加えてもみこなした生地を使用して作られます。
こなしの名前の由来は「もみこなす」からきているといわれています。
こなしは、練り切りよりもほどよい弾力があり、あっさりとした風味が特徴です。
はっきりとした造形に向いており、細工菓子のほか、包み生地としても活用されています。
練り切りの作り方
練り切りは、さまざまな色や形が作れることが魅力的なお菓子です。
そんな練り切りは白玉粉を使用すれば、ご家庭でも作ることができます。
作るモチーフに合わせて必要な食用色素を用意しましょう。使用する色を変えれば、いろいろなアレンジを楽しめます。
複数の色の練りあんを用意し、なじませてグラデーションを作ったり、色のついた練りあんを無色の練りあんで包むことで、表面にほんのりと色を付けたりすることができます。
複数の色を組み合わせることで、幅広いモチーフを表現できるでしょう。
練り切りを作るときは、気温や手の温度について注意が必要です。
熱により練り切りのあんはベタベタとしてくるため、涼しい場所で素早く細工を行いましょう。
夏場に練り切りを作る際は、冷たい水を用意して手の温度を下げながら作るとよいですよ。
専用のヘラや三角棒を用意しておくと、より細かな細工がしやすくなりますが、爪楊枝やナイフなど、ご家庭にある道具でも代用することができます。
また、和菓子用のシリコン型を使用すれば、より簡単に成形できます。
練り切り
赤色が華やかで作りやすい梅の形の練り切りです。
黄色の練りあんを少量のせることで、梅の花の花粉を表現できます。練りあんをお好みの色に仕上げるには、色素を少しずつ加えることがポイントです。ムラがなくなるように混ぜ込むことで、綺麗な練りあんが作れます。
練りあんはよく冷やすと扱いやすくなるので、冷蔵庫でしっかり冷ましてから使いましょう。
梅の練り切りは切り込みを入れて仕上げますが、特別な道具がなくても爪楊枝があれば簡単に作ることができます。
練り切りの代表的な形
四季折々の植物や風物詩が象られる、練り切りの代表的なモチーフをご紹介します。
ここでは主に、日本の風物詩を元にした練り切りをご紹介しますが、練り切りのデザインは和風モチーフに限りません。
ハロウィンにはかぼちゃやおばけ、クリスマスにはツリーやサンタクロースなどをモチーフにして、季節に合わせてさまざまな練り切りを楽しことができます、
【春】桜・菜の花・ウグイスなど
春の訪れを感じる華やかなモチーフです。
春を代表する花といえば、優しいピンク色が特徴の桜や、緑色と黄色の対比が美しい菜の花などがあります。
かわいらしい姿のうぐいすも春に作りたいモチーフのひとつで、見ているだけで癒やされる練り切りに仕上がります。
【夏】ひまわり・スイカ・うちわなど
涼し気なモチーフを参考にした練り切りで、暑い夏を楽しみましょう。
鮮やかな黄色の花びらをしたひまわりの練り切りは、元気で明るい気持ちになれます。
スイカの練り切りは、皮の縞模様が見えるように丸ごとの形で仕上げても、切った赤い実を見せるようにしてもよいでしょう。
うちわの練り切りは、色合いや模様が工夫しやすく、オリジナルのデザインが作りやすいモチーフです。
【秋】紅葉・栗・柿など
秋のモチーフを、温かみを感じるオレンジ色や茶色のあんを使って表現します。
紅葉の練り切りは一色で作っても、色合いをグラデーションにしても美しく仕上がります。
コロンとした丸い形がかわいらしい栗や柿なども、秋にぴったりのモチーフです。
【冬】椿・雪だるまなど
冬に咲く色鮮やかな椿や、真っ白な雪だるまは冬を代表するモチーフです。
椿の練り切りの種類は豊富で、幅広い表現方法で作られています。
さまざまな切り込みの入れ方や色合いがあるので、お好みのデザインを作ってみてはいかがでしょうか。
子供と一緒に見て楽しめる雪だるまも、冬にぴったりのデザインです。
顔やマフラーなどを自由にアレンジすれば、オリジナルの雪だるまが作れます。
練り切りは四季を楽しめる芸術的な上生菓子
練り切りは、上品な甘さが特徴で、四季折々の植物や風物詩などが象られた、見た目にも美しい上生菓子です。
和菓子屋などでは、季節に合わせてさまざまな練り切りが並んでいますが、練り切りはご家庭でも作ることができます。白玉粉や白あんなどを使い、モチーフに合わせて食紅や食用色素で色合いを加えましょう。同じモチーフでも作り手によって完成品が異なるのが練り切りの奥深いところです。
練り切りのモチーフは和風のものに限らないため、オリジナルのデザインで練り切りを楽しんでみてはいかがでしょうか。