
フーチバーとは?ヨモギとの違いや特徴・食べ方などをご紹介
作成日: 2022/06/30
「フーチバー」という食材をご存じでしょうか。フーチバーは、沖縄では古くから親しまれている伝統野菜の一つで、ヨモギと似た葉野菜です。
この記事では、フーチバーとはどんな野菜なのか、ヨモギとの違いや食べ方などについてご紹介します。
フーチバーについて
それではフーチバーについて見ていきましょう。
フーチバーとはヨモギの一種
「フーチバー」はヨモギの一種であるニシヨモギのことです。一部の地域では「ヤタフツイ」とも呼ばれています。
そもそも「フーチバー」という言葉は、沖縄の言葉で「病気」や「薬」を意味する「フーチ」と「葉」を意味する「バー」を合わせたもの。その名の通り、沖縄では薬草や料理の薬味として食されてきました。
フーチバーと本州のヨモギの違い
フーチバーは本州のヨモギと違い独特の香りがあるほか、大きめの葉が特徴です。苦みは少なくそのまま食べられるため、刻んで薬味にするなどして食べられています。また一般的なヨモギは3~5月頃に収穫されますが、沖縄ではフーチバーを1年中収穫することができます。
本州ではヨモギといえば「ヨモギ餅」などがイメージされますが、フーチバーは少し異なります。沖縄では古くから、フーチバーの葉を煎じて服用したり乾燥させて入浴剤にしたりするなど、薬草として利用されてきました。また、雑炊や沖縄そばなどの具材や、肉料理の臭み消しとしても使われています。
ヨモギの栄養
ヨモギとフーチバー(ニシヨモギ)は厳密には違う種類ですが、広い意味では同じ仲間に属しています。ここでは、一般的なヨモギに含まれる栄養素をご紹介します。
基本的な栄養
ヨモギに含まれる栄養素は以下の通りです。
[ヨモギ 生(可食部100あたり)]
・エネルギー:43kcal
・たんぱく質:5.2g
・脂質:0.3g
・食物繊維:7.8g
・炭水化物:8.7g
β-カロテン
ヨモギにはβ-カロテンが含まれています。
[ヨモギ 生(可食部100あたり)]
・β-カロテン当量:5300μg
β-カロテンは、抗酸化作用のある「カロテノイド」の一種です。脂溶性の成分であるβ-カロテンは、油脂と一緒に摂取することで吸収が高まります。そのため、炒め物など油を使う調理方法で摂取するのがおすすめです。
ビタミン
ヨモギにはビタミンB2やビタミンC、ビタミンKなどが含まれています。
[ヨモギ 生(可食部100あたり)]
・ビタミンC:35g
・ビタミンK: 340μg
・ビタミンB2:0.34mg
水溶性ビタミンの一つであるビタミンCは体内でコラーゲンの生成に関わるほか、抗酸化作用を持つ「抗酸化ビタミン」としても知られています。またビタミンKは、血液凝固に関わるビタミン。肝臓で「血液凝固因子」を活性化し、血液の凝固を促します。
ミネラル
ヨモギにはカリウムやカルシウム、リンなどのミネラルも含まれています。
[ヨモギ 生(可食部100あたり)]
・カリウム:890mg
・カルシウム:180mg
・リン:100mg
カリウムは人体に欠かせないミネラルの一種で、体内の浸透圧を調整する働きを担います。また、体内の余分なナトリウムを尿中に排泄するという作用を持つことから、塩分の摂り過ぎを調節してくれる成分でもあります。
フーチバーの選び方
葉は鮮やかな緑色、みずみずしく柔らかそうなものを選びましょう。葉に斑点が出ているようなものは、避けるようにします。
フーチバーの保存方法
フーチバーの風味を楽しむためには摘みたてを味わうのがおすすめですが、一度に食べきれない場合は冷蔵や冷凍での保存が可能です。
ここでは、フーチバーの保存方法を、冷蔵・冷凍に分けてご紹介します。
冷蔵保存
冷蔵保存する場合は、湿らせた新聞に包んで保存しましょう。栽培されていたときと同じ状態、つまり立てた状態で保存するのが日持ちさせるコツです。2~3日で食べ切りましょう。
冷凍保存
塩ゆでしたフーチバーは冷凍保存が可能です。ゆでて水を切ったフーチバーを冷凍用保存袋に入れ、空気をしっかりと抜いてから冷凍しましょう。3〜4週間程度保存できます。使用する際は凍ったまま、もしくは冷蔵庫で自然解凍して使います。
フーチバーの食べ方
沖縄の伝統野菜の一つフーチバーは、主にやわらかい葉の部分を食します。独特の苦みはありますが生でも食べられ、さまざまな沖縄料理のレシピに活躍します。
ジューシー
フーチバーは沖縄風の炊き込みご飯「ジューシー」の定番具材。フーチバー入りのジューシーの素が販売されているほどです。ジューシーはご飯の軟らかさによって呼び方が違い、通常の炊き込みご飯を「クファジューシー」、雑炊に近いものを「ヤファラジューシー」や「ボロボロジューシー」と呼んでいます。
どちらにもフーチバーは使われますが、特に豚肉をゆで汁ごと使うヤファラジューシーにフーチバーを加えると、独特の苦みが和らぎ美味しく食べられます。
沖縄そば
沖縄独特の製法でつくられる麺を使い、豚骨やかつおだしで食べる「沖縄そば」にもフーチバーをトッピング。主に生のフーチバーが薬味として使われています。また、フーチバーが練り込まれた麺を提供するお店もあるようです。
山羊汁
沖縄の郷土料理「山羊汁」にはフーチバーが欠かせません。クセの強い山羊肉の臭み消しとしてフーチバーを加えることで、山羊肉が苦手な方も食べやすくなります。
天ぷら
フーチバーはそのまま天ぷらで味わうこともできます。フーチバーの天ぷらは、カリッとした食感と独特の苦みを楽しめる食べ方です。
沖縄の伝統野菜「フーチバー」を味わってみよう
フーチバーとは沖縄で親しまれているヨモギの仲間「ニシヨモギ」のことで、沖縄の言葉で「病気」や「薬」の意味を持つ野菜。健康野菜としても認識されているフーチバーは、さまざまなビタミンやミネラルが含まれており、沖縄では薬草や料理の薬味などとして使われています。
沖縄料理と相性のよいフーチバーが手に入ったら、ジューシーや沖縄そばなどと合わせて味わってみてくださいね。
【出典】
・日本食品標準成分表2020年版(八訂)
【参照】
・厚生労働省 e-ヘルスネット「カロテノイド」(2022/06/30)
・厚生労働省 e-ヘルスネット「緑黄色野菜」(2022/06/30)
・厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』ビタミンC(2022/06/30)
・厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書 脂溶性ビタミン(2022/06/30)
・厚生労働省 e-ヘルスネット「カリウム」(2022/06/30)