お屠蘇とは?お正月に飲む意味と作法について解説します!
作成日: 2023/12/29
更新日: 2024/09/04
お正月になるとよく聞く「お屠蘇」。お屠蘇とは、無病長寿を願ってお正月に飲むお酒のことを意味しますが、お屠蘇という名前の由来や意味をよく知らないのではないでしょうか。
また、お屠蘇の作法を知らないと少し恥ずかしい思いをしてしまいますよね。
今回は、そんなお屠蘇について、意味や作法などを詳しく解説します。またおうちで作る方法もご紹介するので、ぜひ新年の準備に活用してください。
※こちらの記事でご紹介する内容は、アルコールを含む飲料に触れています。20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
「お屠蘇」とは
お屠蘇はその年一年の無病長寿を願い、一家揃ってお正月に飲む特別なお酒のことを意味します。地域によって違いがあり、関東や東北では日本酒をお屠蘇の代わりに使用する場合もありますが、本来の中身は通常の日本酒とは異なります。
お屠蘇は屠蘇散(とそさん)と呼ばれるいくつかの生薬を調合したものを、日本酒やみりんに漬け込んだ薬草酒です。関西や九州ではこの本来のお屠蘇が飲まれています。
地域によるお屠蘇の違いや、お屠蘇を飲む際の基本的な作法については後ほどご紹介します。
「お屠蘇」という名前の意味
お正月に無病長寿を願って飲まれるお屠蘇ですが、その言葉の由来は諸説あり、「邪気を払って(屠る)、魂を蘇らせる」という説の他、「蘇」という名前の悪鬼を屠る(ほふる)という説があります。
住んでいる地域、家庭によってその解釈に違いがありますが、どちらの説も「悪いものを打ち負かして(屠って)良い物を招き入れる」という意味は共通しています。
「お屠蘇」の材料と歴史
お屠蘇は、地域によって味が異なります。本来のお屠蘇は、日本酒やみりんを屠蘇散と合わせたものを呼びます。一般的に屠蘇散には5〜6種類ほどの生薬が配合されており、多いものでは10種類も配合されているのだとか。屠蘇散の含まれている生薬は以下の通りです。
- 白朮(ビャクジュツ) キク科オケラ/オオバオケラの根
- 肉桂(ニッケイ) ニッケイの樹皮/シナモン
- 防風(ボウフウ) セリ科ボウフウの根
- 山椒(サンショウ) サンショウの実
- 桔梗(キキョウ) キキョウの根
- 陳皮(チンピ) みかんの皮
屠蘇散やお屠蘇は唐の時代に中国から日本に伝えられたとされており、その歴史は非常に長いとされています。日本では始めは平安時代に貴族の正月行事のひとつとして使用されたもので、江戸時代になる頃に庶民に広がったといわれています。
こうして次第に一般庶民の正月行事として定着していきました。
現在では、年末年始の時期になるとスーパー、ドラッグストア、通販サイトなどでも販売されていますよね。300円から販売されており、比較的安い値段で手に入れることができます。日本酒やみりんを購入すると屠蘇散が付属でついてくる場合もあります。
中国から広まったとされるお屠蘇ですが、本来は日本酒に屠蘇散を浸したものの、地域によっては異なったものがお屠蘇として定着しています。関西では日本酒にみりんを加えた甘いお酒に屠蘇散を漬け込んだものをお屠蘇と呼んでいます。
一方で、関東から東北では屠蘇散は使用せず、日本酒そのものをお屠蘇として飲んでいるところが多いです。また、九州では地酒を使用しており、熊本では伝統的な清酒で赤褐色をしている赤酒というお酒を、鹿児島では黒酒という灰持酒(あくもちざけ)に屠蘇散を漬け込みます。
「お屠蘇」を飲む際の作法
ここでは、お屠蘇を飲むタイミングや使用する盃、基本的な作法など、お屠蘇の正しい飲み方について解説します。
盃
屠蘇器という、赤い漆塗りの急須のような朱塗りのお銚子と、三段重ねの盃でいただくのが正式な飲み方です。しかし、現代の一般家庭ではなかなか無いものだと思います。その場合はご家庭にある酒器の中でも代用することが可能です。一番お正月にふさわしいものをお使いください。
飲む前
お屠蘇を飲む前には、必ず若水という元日の朝に汲んだその年初めての水でまず手を清めます。その後、神棚や仏壇を拝み、家族が揃った段階で新年のあいさつを行います。お屠蘇は新年の挨拶が済んで、おせちを食べる前に飲みましょう。
飲み方・飲む順番
お屠蘇には飲む方角、飲む順番が決まっています。飲むときは、まず家族全員が東の方角を向きます。飲む人の右側から注いでいき、飲む順番は年少者から年長者へと進めていくので、
一番左が年長者、一番右が年少者になるよう年齢に沿って並びます。
これには、若者の若くて活発な生気を年長者が飲み取るという意味合いがあります。
本来は三段重ねの盃を使用して1杯ずつ3回に分けて飲みますが、屠蘇器がない場合は1つの盃に3回分けて入れ、分けて飲み干します。
ちなみに厄年の人は厄年ではない他の人に厄を祓う力を分けてもらうことから、最後に飲みます。厄年の人がいる場合は年齢関係なく一番左に並びましょう。飲むときには、「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」と唱えて、無病長寿を願いながら飲みます。
注意事項
お正月に飲むお屠蘇ですが、ここでは注意事項について解説します。
子供の場合
未成年者飲酒禁止法では、お屠蘇も雑酒として扱われます。未成年は禁酒となるため、お屠蘇を飲むことも禁止です子供用には、アルコールを飛ばしたみりんでお屠蘇を作る、もしくは盃を傾けて飲んだふりをするだけで充分です。
飲めなかったとしても問題はありません。お屠蘇の歴史や由来、どのような意味がこめられた伝統行事であるかをしっかり伝えてあげることが大切ですよ。
車の運転
未成年に限らず、車を運転する際にも注意が必要です。年始年末は車で移動することも多いと思います。年始回りや初詣など、車で出かける予定がある場合は、運転手も口をつけず、お屠蘇は飲まずに飲んだふりをするだけにしましょう。
「お屠蘇」の作り方
最近では日本酒がそのままお屠蘇として使用されることが多いですが、ぜひ機会があればおうちで作ってみましょう!いちから原材料を用意するのは大変だと思いますが、屠蘇散としてまとまっているものが売られているのでそれを使用することで簡単に作ることができますよ♪
材料
・日本酒
・本みりん
・屠蘇散:1パック
手順
上記の材料を鍋に入れて、屠蘇散に記載されている時間に合わせて漬け込みましょう。(平均5〜8時間ほど)
ポイント
材料欄に日本酒と本みりんの分量は記載していません。配合は好みになるため正解はありません。お酒とみりんの量はあなたのお好みに合わせて配合しましょう!日本酒は辛口を使用することが多いですが、本みりんの甘さが日本酒の辛いクセを和らげてくれますよ。
注意としては、「みりん風味調味料」ではなく「本みりん」を使うことです。みりん風味調味料には塩分が含まれているため、注意してください。
お屠蘇は作法に気を付けて!お正月に大切な人と楽しんで飲もう
お正月が近づくとよく耳にするお屠蘇という言葉。お屠蘇は無病長寿を願ってお正月に飲むお酒ですが、しきたりや作法はあるものの、地域や家庭によって味はさまざまで絶対的なルールはありません。
現在はおうちでも手軽に作ることができるので、お正月はぜひ家族、大切な人たちと一緒にお屠蘇に挑戦してみてはいかがでしょうか。今回はお屠蘇の作り方についてもご紹介したので、簡単にお屠蘇をおうちで作ってみたい方や、お正月に飲むお酒を探している方はぜひチェックしてみてください。