天然酵母パンとは?味わいにどんな違いが出るの?
作成日: 2023/09/28
更新日: 2023/10/22
パン屋さんに行ったとき、天然酵母のパンが売られているのを見たことがあるという人も多いでしょう。「天然」という名前がついており、何となく健康によいというイメージがあるかもしれません。ところで、天然酵母と一般的なパンに使われているイーストとの違いは何でしょうか。
この記事では、パン作りに欠かせない酵母の解説や、天然酵母を使ったパンの特徴について解説します。天然酵母と一般的なパン作りに使われるイーストとの違いも説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
酵母について
ここでは、天然酵母の名前にもついている酵母について詳しく解説します。
酵母とは
酵母とは、ひとつの細胞から成る微生物で、カビやきのこと同じ真菌類の一種です。顕微鏡で拡大して見てみると、丸いものや楕円形のものがあります。酵母には、糖を分解してアルコールや炭酸ガスを作りだす性質があります。
目に見えないほど小さい酵母ですが、野菜や果物の表面、土の中や空気中などさまざまな場所で生育しており、身近な存在といえるでしょう。
お酒作り
酵母はパン作りだけでなく、お酒やみそ、しょうゆなどを醸造するために昔から利用されてきました。お酒づくりには、お酒づくりに適した性質を持つ酵母が使われます。
たとえば、日本酒作りには清酒酵母というアルコール発酵だけでなく良い香りを作る酵母が、ワイン作りにはぶどう果汁を発酵させるワイン酵母が、ビール作りには麦芽を発酵させるビール酵母が使われます。
パン作り
パンを作るにも酵母は欠かせません。パンのふっくら柔らかい食感には、酵母の発酵がかかわっています。パン生地はそのままだと膨らまず固い仕上がりになりますが、酵母を混ぜて発酵させることで炭酸ガスが発生し、パン生地の間に細かい部屋を作ります。
この炭酸ガスの部屋が重なることにより、ふわふわとした弾力が生まれます。また、加える酵母の種類によって、香りが立つものや味わいに深みが出るものなどさまざまな特性があることが特徴です。
このパン作りに使用する酵母の種類のなかに「天然酵母」や「イースト」があります。「天然酵母」や「イースト」にどのような特徴があるのか、見ていきましょう。
天然酵母について
天然酵母は、野菜や果物など自然界に存在する酵母を指しますが、はっきりとした定義はありません。天然酵母とは、パン作りに向いた酵母を分離して人工的に増やし、育てたイーストに対して区別する名前でもあります。
パン作りに適した酵母のみでほかの菌を含まないイーストに対して、天然酵母には乳酸菌などの菌も含まれていることが特徴です。また、イーストは添加物を加えていますが、天然酵母は添加物を使用していません。この天然酵母にも、自家製酵母と市販の酵母に分けられます。
ここからは、それぞれの特徴について解説します。
自家製酵母
果物や穀物の表面についている酵母を増やして利用するのが、自家製の天然酵母です。りんごやレーズンなどを水に浸けて何日か置いたあと、栄養となる果汁や小麦粉などを加えて酵母を増やし、パン作りができる状態になるまで酵母を育てます。
酵母を増やすには温度管理や状態の見極めが大切なので、パン作り初心者の方には難しいかもしれません。酵母がついていた食材によってパンとして焼き上がったときの風味も異なるため、さまざまな風味のパンが味わえるのが魅力です。
市販の天然酵母
天然酵母には、市販されているものもあります。市販の天然酵母は、乾燥させて粉末状で売られているものが多くあります。ドライタイプの天然酵母は、ぬるま湯に溶かして発酵させてから、パン作りに使用します。
天然酵母は種類によって風味が違うため、さまざまな天然酵母を使って焼き上がったパンの香りや味わいの違いを楽しむのもおすすめです。
しっとりもっちりとした食感になる酵母や、すっきりとした味わいになる酵母など、商品によっても様々なので、ぜひ好みに合わせて選んでみてください。
天然酵母パンの特徴
天然酵母を使ったパンは、もっちりとした噛みごたえが特徴で、重みのあるハードパンを作るのに向いています。さまざまな菌を含む天然酵母は、発酵するときにパン酵母だけでなく乳酸菌など種類が違う菌の働きにより、味や香りに深みが生まれます。
使う天然酵母によって酸味や甘みなどパンの風味に違いが出るのも魅力のひとつです。また、焼きたてが美味しいイーストのパンは、時間が経つと乾燥して風味が抜けて食感がパサパサとする傾向がありますが、天然酵母のパンは時間が経っても風味が残り美味しく食べられます。
イーストについて
イーストとは、パン作りに適した酵母を人工的に分離して増やしたものです。イーストとは英語で「酵母」のことで、天然酵母と同じように酵母の仲間です。
イーストは、工場でパンを大量生産するときにも使われます。安定した発酵力を持ち、発酵時間が比較的短いため、家でのパン作りも失敗しにくいでしょう。イーストには、さまざまな種類があります。ここからは、イーストの種類と特徴について見ていきましょう。
生イースト
生イーストは、粘土のような見た目をしており、固形で売られています。生イーストは、パン作りに向いた酵母を集めて増やしたあと、水で洗って水気を切ったものです。パン作りに使用するときには、牛乳や水に溶かして予備発酵させておく必要があります。
消費期限が短いため、開封後はなるべく早く使い切りましょう。
インスタントドライイースト
インスタントドライイーストとは、培養したイーストを乾燥させた粉末状のイーストです。ドライイーストはパン作りに使う前に予備発酵させる必要があります。この予備発酵の必要のないドライイーストをインスタントドライイーストといいます。予備発酵の手間を省けるため、普通のドライイーストよりも手軽に使えます。
セミドライイースト
セミドライイーストは、優れた安定性と効果をもつイーストです。セミドライイーストは冷凍しても発酵力が弱まることなく、冷凍保存も可能です。インスタントドライイーストのように予備発酵なしで使えるため、手間がかかりません。また、イースト臭が少ないため、イースト臭が気になるという方にもおすすめです。
イーストパンの特徴
イーストパンは天然酵母を使ったパンと比べると、食感や味わいが異なります。イーストで発酵させたパンは、ふっくらと柔らかく軽い食感が特徴です。また天然酵母に比べて焼きたての香りが強くなります。
ドライイーストは、小麦粉や水、砂糖、塩など材料を入れるときに一緒に混ぜ合わせることが上手に発酵させるポイントです。また塩に触れると水分が奪われて酵母が死んでしまい、パンがうまく膨らまなくなることがあるため、塩から遠ざけてドライイーストを加えましょう。
パンの発酵について
パンを作るときには、一次発酵や二次発酵をする必要があります。以下の記事では、パン生地の発酵について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
DELISH KITCHENの天然酵母・パンのレシピ
ここからは、おうちでできる天然酵母の作り方や、天然酵母を使ったパンのおすすめレシピをご紹介します。
レーズン酵母
おうちでレーズンから、天然酵母を取り出してみませんか。レーズンとミネラルウォーターを混ぜて、27度前後の場所に置いておくだけで天然酵母が増やせます。ノンオイルコーティングのレーズンを使いましょう。
レーズンパン
レーズンから取り出した天然酵母を使った、風味豊かなレーズンパンを作ってみましょう。じっくりとパン生地を発酵させることで、より風味や味わいのよいパンになります。朝食やおやつにぜひお試しください。
レーズン酵母で作る山型食パン
レーズン酵母で作る山型食パンです。しっとりもっちりとした食感と、ひと口食べたときの豊かな香りは、ついクセになってしまうおいしさです。レーズン酵母で発酵させたパンの、いつもと違う風味を味わいましょう。
手間ひまかけて作るのが新鮮!天然酵母のパン作りを楽しもう
天然酵母とは、果物や穀物の表面についている酵母のことです。工場での大量生産に使われるイーストと異なり、酵母だけでなく乳酸菌などほかの菌が混ざっていることや、添加物が使われていないことが特徴です。
天然酵母はイーストに比べて発酵に時間がかかりますが、豊かな香りと味わいのパンに仕上がるだけでなく、時間が経っても風味が味わえます。レーズンやリンゴから天然酵母を取り出して、おうちでパン作りをすることもできます。
ここでご紹介したレシピを参考に、ぜひ天然酵母でのパン作りに挑戦してみてください。