パンの一次発酵と二次発酵について解説!発酵方法や時間もご紹介
作成日: 2022/03/22
手作りのパンは焼きたての香ばしい香りとおいしさが魅力です。発酵はパン作りで欠かすことのできない工程で、一次発酵、二次発酵と2回ほど行います。なぜ、発酵を2度も行うのでしょうか。
この記事では、パンの一次発酵と二次発酵について解説します。また、発酵させすぎてしまった場合の対処法や、パンが膨らまない原因とその対応方法もご紹介しますので、パン作りの参考にしてください。
発酵とは
発酵は、イースト(パン酵母)がパンの生地内の糖分を分解することで、炭酸ガスやアルコールが発生する現象のことです。グルテンの中に炭酸ガスが溜まってパン生地が膨らみます。
バケットなどのかたいパン、食パンやロールパンなどのやわらかいパンといった、パンの種類によっても発酵の仕方や時間は異なります。
一次発酵について
ここからは一次発酵について解説します。
目的
一次発酵の目的は、生地を膨らませてふんわりとした食感にすることです。発酵の過程で生地が熟成して、小麦の風味や旨味を引き出す効果があります。短時間で発酵させるよりも時間をかけて発酵させるほうが、風味が増しておいしいパンを焼くことができます。
方法
パンの種類によって異なりますが、ここでは一般的な方法をご紹介します。まずは丸めた生地をボウルに入れて、生地の乾燥防止のためにラップをかぶせます。室温25~35℃、湿度70~75%の環境に置いて、生地が2~2.5倍に膨らむまで待ちましょう。
冬場など室温が低い場合は、オーブンの発酵機能を活用してください。また、オーバーナイト法という発酵方法もあります。冷蔵庫内に8時間以上置いておく低温長時間発酵のことで、基本的にはどの生地でも使うことができる方法です。
目安
ボウルの中の生地が2~2.5倍の大きさに膨らんでいたら、一次発酵終了の目安です。生地の見た目だけではなく、フィンガーテストでも確認できます。フィンガーテストとは、生地の中央に強力粉をつけた指を差し込んで抜くことで生地の状態をチェックする方法です。
指を差し込んだ穴がそのままか、少し小さくなる状態であれば一次発酵は終了になります。穴がすぐに戻ってしまったら発酵不足、穴の周囲にシワができたり生地の表面に気泡がたくさんあったりしたら過発酵です。
二次発酵について
続いて、二次発酵について解説します。
目的
二次発酵の目的は、生地を焼いているときに最も膨らむようにするために、生地が最大に膨らむ直前まで発酵させることです。焼いているときに生地に膨らむ余裕があると、パンがふっくらと焼き上がります。二次発酵は、最終発酵やホイロともいいます。
方法
成形した生地をオーブンシートに並べて、室温30~40℃の環境に置き、生地が2倍ほどに膨らむまで待ちましょう。オーブンの発酵機能を使う場合は庫内が乾燥しやすいので、熱湯を入れた小さな容器を庫内に置いて乾燥を防ぐ方法もあります。
目安
成形した生地が2倍ほどの大きさに膨らんでいたら、二次発酵終了の目安です。見た目で判断しにくいときは、生地の表面を指で軽く押してみましょう。生地が湿っているときは、指に生地がつかないように、粉をつけてから触ってください。
指の跡が少し残るくらいのかたさであれば二次発酵は終了です。跡が完全に戻ってしまう場合は発酵不足、跡がしっかり残った場合は過発酵です。
パンを発酵させすぎた場合について
パンを発酵させすぎた場合(過発酵)の対応方法をみていきましょう。
一次発酵で発酵させすぎた場合
ベンチタイムや二次発酵の工程中にさらに発酵が進んでしまうので、ベンチタイム不要の丸パンにしたり、ピザ生地にしたりしましょう。生地に弾力が残っている場合は、二次発酵の時間を短くすることで修復可能な場合もあります。
二次発酵で発酵させすぎた場合
二次発酵のあとの工程は焼くだけなので、すぐに焼きましょう。発酵がすすんだ生地はパサパサしていてアルコール臭が強くなり、風味や旨味が悪くなってしまいます。また、糖分も分解されて甘味も少なくなっています。
パサパサの生地には液体がよく染み込むので、卵液を染み込ませて焼くフレンチトーストにしたり、バターをたっぷり使ってサクサク食感を味わうラスクにしたりするのがおすすめです。
特に夏場の場合は、材料を冷蔵庫に入れて冷やしたり、仕込み水に冷たい水を使ったりして生地の温度を下げる工夫をして過発酵を防ぎましょう。イーストの量や仕込み水を減らしたり、発酵時間を少し短くしたりするなどの対策を行うと効果があります。
パンが膨らまない原因について
ここからはパンが膨らむ理由と、膨らまない原因について解説します。
パンが膨らむ理由
生地をこねるときに形成されるグルテン膜は、イーストによって発生する炭酸ガスを包み込みます。生地を加熱すると炭酸ガスが膨らみ、グルテン膜も風船のようにのびてパン自体が大きく膨らみます。
発酵時に膨らまない原因と対処法
発酵時に生地が膨らまない原因と対処法について解説します。
・材料の計量ができていない
パン作りでは正確な計量が欠かせません。入れ忘れや入れ過ぎを防ぎ、はかりを使って正確な計量をしましょう。
・配合のバランスが悪い
ライ麦、全粒粉、米粉などを使ったパンは、配合の割合が高すぎると生地が膨らみにくくなります。全体の粉量に対して、10〜30%を目安にしてください。
・イーストが古い
古いイーストは発酵力が弱くなっています。開封したものはなるべく早く使い切るか、できるだけ空気に触れないように密閉して冷蔵保存しましょう。
・こねが不足している
こねが不足してグルテンが弱い状態だと、グルテン膜が炭酸ガスを保持することができず外へ逃がしてしまい生地の膨らみが悪くなってしまいます。しっかりとこねて、強いグルテンを作るようにしてください。
・発酵温度が低すぎる
発酵温度が低すぎると、イーストが活性化しないので発酵が進みません。冬場など気温が低いときは、発酵器やオーブンの発酵機能、湯せんにあてるなどして発酵温度の調整をしましょう。
・生地が乾燥した
発酵には適度な湿度が必要です。生地が乾燥しないように、必ずぬらした布巾やラップを生地にかけるなどの対策をしてください。また打ち粉が多すぎると、生地の水分が失われて乾燥してしまうので注意が必要です。
・成形が悪い
とじ目がしっかりとじていないと、炭酸ガスが逃げてしまい生地が膨らみません。また成形時に生地に触りすぎたり、強い力で丸めたりすると生地に負担がかかってしまいます。とじ目はきちんととじて、生地に負担をかけないようにやさしく扱いましょう。
こねあがり(こね上げ)温度や発酵温度、湿度などの環境によって、発酵時間は異なります。こね上げ温度とは、生地をこね終えた直後の生地の温度のことです。
レシピに記載されている発酵時間はあくまで目安です。季節によって発酵時間も変わります。夏場は室温が高いので発酵が早く、冬場は室温が低いので発酵は遅くなります。生地の状態を見て判断するようにしてください。
焼成時に膨らまない原因と対処法
続いて、焼成時に膨らまない原因と対処法について解説します。
・発酵不足
発酵が不足していると、生地中の炭酸ガスの量が少ないので膨らみません。焼いても生地がつまってかたいパンになってしまいます。しっかり発酵させてからオーブンに入れるようにしましょう。
・生地のガスを抜いてしまった
二次発酵が終わった生地に触ってしまうと、炭酸ガスが抜けてしまい生地が膨らまなくなってしまいます。二次発酵が終わった生地には触らないようにしましょう。生地の表面にハケで卵液を塗るときも、炭酸ガスを抜かないようにやさしく行ってください。
・オーブンの予熱をしていないか温度が低い
生地は焼き始めてから5分ほどで一気に膨らみます。オーブンの予熱をしないで焼くと、生地が膨らむタイミングを失ってしまうので、予熱は必ず行いましょう。予熱が終わったあとに時間を置いてしまうと庫内の温度が下がってしまいます。予熱が終わったらすぐにパンを焼いてください。
生地の膨らみが悪いときは、オーブンの温度が低い場合もあるので温度を見直しましょう。
・オーブンの温度が高すぎる
オーブンの温度が高すぎると、先にパンの表面が焼けてしまって生地が膨らみません。膨らみが悪いときは、オーブンの温度を確認しましょう。
・焼いている最中にオーブンを開けてしまう
焼いている最中にオーブンを開けてしまうと、庫内の温度が低下して生地が膨らまなくなってしまいます。酵母菌は温度が60℃を超えると死滅して、生地の発酵が止まります。オーブンを開ける必要がある際は、焼き始めてから数分ほど経ってから開けるようにしてください。
DELISH KITCHENのパンのレシピ
さまざまな方法で作るちぎりパンと、オーバーナイト法で作るパンのレシピをご紹介します。
基本のちぎりパン
ふわふわの食感と焼きたてのパンの香りがたまらないちぎりパンです。発酵はあたたかい場所で行ってください。ちぎってそのまま食べるのはもちろん、ジャムなどをつけて食べるのもおすすめです。
シンプルちぎりパン
生地をレンジで加熱することで発酵時間が短くすみます。生地は耳たぶくらいのやわらかさになるまでこねるのがポイントです。シンプルな味わいなのでチョコレートやドライフルーツを入れてアレンジするのもおすすめです。
フライパンでちぎりパン
フライパンで作る、枝豆とコーンが入った食べごたえのあるちぎりパンです。生地に豆腐と調整豆乳が入っているので、ふんわりとしていてやさしい味わいです。朝食やランチにいかがですか。
オーバーナイトパン
材料は強力粉、ドライイースト、塩、砂糖だけ。冷蔵庫で6〜8時間発酵させて作るパンです。ゆっくり発酵させることで小麦の甘さと風味が引き立ちます。夜に仕込んで朝に焼きたてのパンを味わうのもよいですね。
一次発酵と二次発酵は目的が異なる
一次発酵は生地を膨らませてふんわりとした食感にするため、二次発酵は焼いているときに生地が最大に膨らむようにするために行います。発酵は難しそうですが、方法や目安を覚えておくと意外と簡単に行うことができます。
発酵させすぎてしまったときの対処法や、生地が膨らまない原因を知っていればさらに安心でしょう。発酵の工程を丁寧に行うとおいしいパンを作ることができますよ。