豆味噌とは?赤味噌や八丁味噌との違いやレシピご紹介
作成日: 2021/10/02
日本の伝統的な調味料である味噌は、現在でも地域性が色濃く残っていることで知られています。
味噌には製法や原料、熟成期間などの違いによってさまざまな種類があります。大きく分けて米味噌、麦味噌、調合味噌などがあり、その中のひとつに「豆味噌」があります。なじみのない人には、豆味噌がどんな味噌なのか分からないかもしれません。
この記事では、豆味噌の特徴や似ている味噌との違い、豆味噌の使い方などをご紹介します。
豆味噌について
まずは、豆味噌についてご紹介します。
豆味噌とは
豆味噌は、東海地方の主に愛知県、三重県、岐阜県を中心に生産されている味噌で「三州味噌」とも呼ばれています。
東海地方の郷土料理や懐石料理の赤だしには欠かせない味噌で、豆味噌の代表的なものに「八丁味噌」󠄀があります。
豆味噌の歴史は古く、千数百年前にはすでに作られており、西暦730年には現在の愛知県西部に位置する尾張の国から、朝廷に献上された記録が残っています。
このことから、豆味噌は古くから東海地方の食文化を支えてきた調味料といえます。
豆味噌の特徴
豆味噌の原料は、大豆、塩、水のみとシンプルです。
米を使用せず大豆に麹をつけた豆麹を使用し発酵、熟成させて作られています。
甘味が少なく濃厚な旨味の中に、渋みと少しの苦味を感じられるのが特徴です。
米味噌や麦味噌の熟成期間が1年未満~1年程なのに対して、豆味噌の熟成にはそれよりも長い1〜3年程の期間を要します。
熟成期間が長いため、ほかの味噌に比べて色が濃く、赤みがかった焦げ茶色の味噌ができあがります。
色の濃い豆味噌は、旨味とコクが強いため味も濃く感じることから、塩分が高いと思われがちです。
しかし、米味噌100gあたりの塩分含有量は12gなのに対して、豆味噌の100gあたりの塩分含有量は11gと、米味噌と比べると塩分は少なくなっています。
豆味噌の味が濃く感じるのは、ほかの味噌に比べて大豆の割合が多く、大豆に含まれる旨味をダイレクトに感じることができるためです。
また、濃厚な味わいなので料理に使用する量が少なく済むことから、減塩の効果が期待できます。そのため、塩分を気にしている方にもおすすめの味噌です。
さらに、豆味噌の旨味やコクは煮込むほどに強くなる特徴があります。
米味噌や麦味噌の甘味と香りは加熱すると飛んでしまいますが、豆味噌はぐつぐつと煮込む料理との相性が抜群です。加熱すると香ばしい香りがするため食欲をそそりますよ。
なお、こちらの記事では味噌の種類について解説しています。
八丁味噌・赤味噌との違い
見た目がよく似ている豆味噌、八丁味噌、赤味噌ですが、それぞれどんな違いがあるのでしょうか。
豆味噌は、豆、塩、水のみを原料として、長期熟成させて作られた味噌のことを指します。
生産地はほぼ愛知県で、東海地方を中心に食べられている味噌です。
赤味噌は、名前の通り見た目の色が赤っぽい味噌全般を指します。
そのため、原料や作り方の違いは関係なく日本全国で作られており、原材料も大豆や麦、米などさまざまです。
ちなみに赤だしとは、豆味噌に米味噌や調味料を混合した味噌のことです。
八丁味噌は、愛知県岡崎市の八帖町(旧八丁村)で江戸時代初期から作られている豆味噌の名前です。
八丁味噌は長期熟成させて作られているのが特徴で、製法、原料、熟成などの作り方に関して、国が定めた基準を満たした豆味噌だけが八丁味噌を名乗ることができます。
豆味噌は米や麦を使用しておらず大豆と塩だけで長期熟成し作られた味噌、赤味噌は見た目が赤っぽい味噌の総称、八丁味噌は愛知県岡崎市の八帖町で作られた国が定める基準を満たしている豆味噌のことです。
豆味噌に使われる豆の種類
豆味噌は基本的に大豆が主原料ですが、大豆以外の豆でも豆味噌は作られています。
ここでは豆味噌に使われる豆の種類と、それぞれの味噌の味の違いなどについてご紹介します。
大豆
大豆が原料の豆味噌は、最もスタンダードな豆味噌といえます。
大豆本来の旨味と風味が凝縮された味噌になっており、独特の渋みがあるやや辛口な味噌に仕上がります。
濃厚な味わいの大豆の豆味噌は、さまざまな料理に使いやすく、さばの味噌煮などにもおすすめです。
黒豆
黒豆は、大豆の品種のひとつで黒い皮が特徴の豆です。
黒豆で作られた味噌は、黒い皮によって真っ黒な見た目であることが多くなっています。
通常の大豆で作った味噌よりも、黒豆から作られた豆味噌はコクと甘味が強く、高級感のある味わいに仕上がります。
味噌汁にしたり野菜につけて食べると、その香りや旨味を存分に味わえます。
ひよこ豆
ひよこ豆とは、アジア西方が原産のくちばしのような突起がある豆で、ひよこに似ていることからその名が付けられたとされています。
ひよこ豆は大豆と比べて、あっさりとした味が特徴です。
そのため、大豆の代わりにひよこ豆を使って仕込んだ味噌は、くせがなくやさしい甘味があり和食だけでなく洋食にもよく合います。
田楽や焼きおにぎりなどに使うと、子供でも食べやすい味わいになりますよ。
レンズ豆
レンズ豆は、イタリア、フランス、インドなどで一般的によく使われている豆です。
日本ではあまりなじみがない豆ですが、レンズ豆でも味噌は作れます。
レンズ豆で作られた味噌は、もろみ味噌のように粒の食感が楽しい味噌になります。
白味噌のように強い甘味があり、くせがないので和食のほか洋風の料理によく合います。スープやグラタンに使うのもおすすめです。
えんどう豆
えんどう豆で作られた味噌は、甘味と旨味が強い上品な風味に仕上がります。
えんどう豆の粒が残っており食感も楽しめます。
上品な味わいの味噌なので和食はもちろん、洋食などさまざまな料理に使うことができます。
豆味噌の使い方とDELISH KITCHENのレシピ
加熱すると旨味がアップする豆味噌は、味噌汁にはもちろん、煮込み料理や味噌だれに使うのにぴったりです。
ここからは赤味噌を使ったレシピをご紹介しますが、豆味噌でもおいしく作れます。
ちなみに愛知県では、赤味噌というと豆味噌のことを指します。
【味噌汁】
味噌の味わいを存分に楽しめる料理といえば味噌汁です。
なすと油揚げの味噌汁
加熱してとろとろになったなすがたまらない味噌汁です。
濃厚な味わいの味噌が、あっさりとしたなすと油揚げに染み込みます。お好みの具材でアレンジも楽しめます。
【煮込み】
豆味噌は加熱しても風味が飛びにくく、煮込むほどに旨味やコクが強くなる特徴があるため、煮込み料理におすすめです。
手羽先の味噌煮込み
名古屋のご当地グルメでもある味噌煮込みは、赤味噌料理の代表ともいえます。
旨味たっぷりの柔らかい手羽先に濃厚な味噌の味付けが染みて、ご飯が進む一品に仕上がります。
モツのどて煮
愛知県で愛されているローカルフードのひとつ、モツのどて煮です。
味噌を使った濃い目の味付けで、ご飯にもお酒にもよく合います。こってりとした味わいはくせになるおいしさです。
味噌おでん
一般的におでんは醤油ベースのだし汁で煮込んだ料理ですが、愛知県では豆味噌をおでんにつけて食べるのが主流です。
こちらは味噌を使った甘めのだし汁のおでんです。濃厚な味わいが具材のおいしさを引き立たせ、やみつきになるおいしさです。
【たれ】
名古屋といえば赤味噌だれです。味噌をベースに砂糖などの調味料を合わせて作ったたれは、まろやかな甘味と味噌のコクを味わえます。
豆腐とこんにゃく田楽
あっさりとした豆腐とこんにゃくに甘めの味噌だれを乗せた田楽です。
味噌だれはコクのある濃厚な味わいで食欲をそそります。レンジで簡単に作れるのもポイントです。
味噌かつ
サクサクのかつに味噌をベースとした甘辛いたれがかかった味噌かつです。
味噌は豆味噌を使うと本場の名古屋の味わいに近づきますよ。コクのある味噌だれが衣によくからみ、ジューシーなかつがたまらない一品です。
豆味噌は主に東海地方で作られている濃厚な味噌
豆味噌は東海地方の特産品であり、地域の郷土料理には欠かせない味噌です。
大豆、塩、水のみを原料として作られており、ほかの味噌に比べて色が濃く、甘味が少なくて濃厚な旨味が特徴です。
また、米味噌や麦味噌は加熱すると香りや甘味が飛んでしまいますが、豆味噌は煮込むほどにコクや風味がアップするため、煮込む料理との相性が抜群です。
いつも使っている味噌を豆味噌に変えるだけでも、また違った味わいを楽しめますよ。