懐石料理とは?会席料理や割烹料理と何が違う?
作成日: 2021/10/19
懐石料理といえば、豪華な和食の料理を想像する人が多いでしょう。懐石料理と会席料理では、どのような違いがあるかご存知でしょうか。
この記事では、懐石料理について解説していきます。由来や歴史に加え、懐石料理の流れやレシピを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
懐石料理とは
懐石料理とはどのような料理なのでしょうか。会席料理や割烹料との違いも合わせてみてみましょう。
懐石料理とはどんなもの?
懐石料理の「懐石」は、「温石(おんじゃく)」が由来になっていると言われています。温石とは、暖を取るために温めた石で、を懐に入れていたことから、「懐石」と呼ばれるようになりました。
禅寺の僧侶は一日一食であったので、温石によって冷えやすい体を温めるとともに、空腹を紛らわせていました。実際は温石でお腹が満たされることはありませんが、体の冷えと空腹が合わさるのは耐えがたいですよね。温石は空腹感をしのぐための道具でもあったのです。
茶事では、お茶をいただく前に料理が提供されます。料理によって来客をもてなすだけでなく、美味しくお茶を飲んでもらえるようにという心遣いを感じられます。あくまでもお茶を楽しむための料理なので、量は少なめです。
茶事での料理は、空腹感が和らぐ点で温石と共通し、懐石と呼ばれるようになりました。これが、懐石料理の始まりです。
懐石料理の基本は一汁三菜で、四季折々の旬の食材が使用されます。本来の一汁三菜は、ご飯、汁物、向付に3つのおかずがつきます。3つのおかずは、椀盛、焼物、煮物です。しかし、懐石料理の品数は、非常に多くなっています。
懐石料理では、一汁三菜が提供された後、強肴(しいざかな)、箸洗(はしあらい)、八寸(はっすん)、湯桶(ゆとう)・香の物と続きます。その後で、菓子とともに茶をいただくのです。
由来・歴史
先ほど、懐石料理という名前は、「温石(おんじゃく)」が由来になっているとお伝えしました。温石は、平安時代から江戸時代にかけて使われていた暖を取るための石です。
禅寺の古い習慣で、温めた石を懐に入れていました。禅僧は温石を使って暖を取るだけでなく、空腹をしのいでいました。
茶の湯では、お茶を楽しむ前に来客をもてなす料理が提供されます。来客は、お茶の前の料理によって亭主の心遣いを感じることができます。お茶の前にいただく料理なので、量はあまり多くなく、空腹をしのげる程度です。
空腹をしのげるという特徴が温石と共通しており、懐石と呼ぶようになったのです。懐石だけで料理という意味が込められていますが、茶懐石と区別するために懐石料理と呼ばれるようになりました。
会席料理との違い
茶の湯が発展したのは、安土桃山時代です。当初は、茶の湯で提供される料理を会席と呼んでいました。茶の湯を確立した千利休は、禅寺の精進料理をもとに、簡素なものにしました。
かつては会席と呼ばれることもありましたが、懐石という文字が当てられるようになりました。お茶の前に提供される料理は、空腹をしのげる程度の量で、僧侶の懐に入れていた温石の特徴と共通しているためです。
現在は、懐石料理も会席料理も豪華なものになっています。懐石料理は、お茶を飲む前に楽しむ料理で、最初に飯や汁物が提供されます。一方、会席料理はお酒を楽しむためのものなので、飯や汁物は最後です。
割烹料理との違い
割烹料理とは、割烹で提供される料理のことです。割烹料理の「割」は、包丁で切るという意味で、「烹」は煮たり焼いたりして火を通すことを表します。割烹はカウンター形式になっているので、調理場と食事を取る場所の距離が近いです。
カウンターから直接注文し、一品ずつ提供してもらうスタイルなので、決まった順番通りにいただく懐石料理とは異なります。
懐石料理の流れやレシピを紹介
懐石料理の基本は一汁三菜です。一汁三菜とは、ご飯、汁物、向付に3つのおかずがつきます。3つのおかずとして、椀盛、焼物、煮物が順番に提供されます。
懐石料理では、一汁三菜が提供された後、強肴(しいざかな)、箸洗(はしあらい)、八寸(はっすん)、湯桶(ゆとう)・香の物と続きます。その後で、菓子と茶をいただくのです。
懐石料理は、膳が一つに限られています。これは、室町時代に成立したスタイルの本膳料理と大きく異なります。本膳料理は豪華な料理形式で、膳がいくつか用意され、それぞれに料理をのせます。懐石料理は本膳料理と比較すると、非常に簡素なものであると言えます。
しかし、懐石料理は亭主のおもてなしの心が詰まった料理が順番に提供されていきます。温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに食べられるように提供のタイミングまでこだわられているのです。
また、料理の盛り付けからも心遣いを感じられます。前盛りという盛り付け方をご存知でしょうか。一皿ごとのメインの食材の前側に、引き立て役のあしらいを添えます。
あしらいとして、飾り切りにした食材や酢漬けにした薬味などが添えられます。盛り付けでだけでなく、料理と器物との調和も考えることで、美しさを表現しています。
【飯、汁、向付(むこうづけ)】
懐石料理では、飯、汁、向付を最初に提供します。飯は炊きたてを提供することが決まっています。飯の盛り付け方は、流派によって山型や丸型など異なります。
茶懐石での汁は、味噌汁のことです。精進料理がもとになっているので、具には野菜や豆腐など植物性のものが使われます。
まず、味噌汁のレシピを見てみましょう。
基本のみそ汁
豆腐とわかめを使った基本の味噌汁のレシピです。シンプルな具材ですが、かつお節と昆布で出汁を取ると、奥深い味わいに仕上がります。出汁の取り方を覚えておけば、さまざまな料理に生かせるので、ぜひチャレンジしてみてください。
続いて、向付で提供されるなますや刺身のレシピをご紹介します。
紅白なます
お正月やお祝いの席でも提供される紅白なますのレシピです。甘酸っぱい味付けで、さっぱりいただけます。短時間で簡単に作ることができますよ。
鯛の昆布締め
昆布の旨味と風味が香り、上品な味わいの一品です。刺身用の鯛を使うと、手軽に作れます。お好みに合わせて、締める時間を調整してみてください。
【椀盛】
椀盛は、飯、汁、向付の後に提供されます。具材や吸い口で季節を感じる風味を出します。吸い口とは、汁物に加える薬味です。吸い口によって汁物に香りが加わります。椀盛のレシピをチェックしましょう。
グリーンピース入り海老しんじょう
グリーンピースが入った海老しんじょうのレシピです。むきえびのピンク色とグリーンピースの緑色が可愛らしいです。むきえびは、粘りが出るまで包丁で叩くことで、他の材料となじみやすくなります。
【焼物】
焼物として主に提供されるのは、焼き魚です。焼物は大皿に盛られており、食べる分を取り分けます。旬の魚を使うことで、季節を感じることができます。ここでは、照り焼きと西京焼きのレシピをご紹介します。レシピとは異なる魚でも美味しく作れるので、ぜひ旬のものを使ってみてください。
基本のぶりの照り焼き
和食の定番であるぶりの照り焼きのレシピです。甘辛いたれがご飯によく合います。初めに魚の表面をしっかり焼くのが、ふっくらジューシーに仕上げるポイントです。
さわらの西京焼き
白みその上品な香りを楽しめるさわらの西京焼きのレシピです。フライパンで焼くので、どのご家庭でも作りやすいレシピになっています。西京焼きは非常に焦げやすいので、弱火でじっくり焼くようにしましょう。
【煮物】
煮物は、懐石料理のメインと言われています。季節の素材を使い、それぞれを別々に炊いて一つの料理として提供されることが多いです。手間と技を要する一品なので、料理人の腕が試されます。ここでは、2種類の煮物のレシピをご紹介します。
高野豆腐の炊き合わせ
手間のかかる炊き合わせを手軽に作れるようにアレンジしました。本来の炊き合わせは食材を別々に煮て、一つの器に盛り付けますが、こちらのレシピでは一つの鍋で調理できます。乾物の旨味がぎゅっと詰まった優しい味わいの煮物に仕上がります。
基本の里芋の煮ころがし
ねっとりとした食感に甘辛い味付けがクセになる里芋の煮ころがしです。煮ている間に焦げやすい煮ころがしですが、里芋の下処理をしっかり行うことで、失敗しにくくなります。
【強肴(しいざかな)】
強肴とは、「強いてもう一品すすめる肴」という意味が込められています。和え物や揚げ物などお酒に合う料理が提供されます。ここでは、和え物と酢の物のレシピを見てみましょう。
基本の白和え
なめらかな口当たりで、さまざまな食材が合わさった味わいがクセになる白和えのレシピです。すり鉢で和え衣の材料を丁寧にすり混ぜることで、なめらかになります。食材の大きさをそろえ、見た目よく仕上げましょう。
基本の酢の物
きゅうりのシャキシャキとした食感を楽しめる酢の物のレシピです。かにかまを加えると、手軽に彩りよく仕上がります。さっぱりとした味付けなので、箸休めにもおすすめの一品です。
【箸洗(はしあらい)】
箸洗は、さっぱりとしたお吸い物です。一旦口を休めるという意味を持ち、少量のお吸い物をいただきます。白湯に梅肉を落としたり、少量の塩で味つけした昆布だしを小ぶりの椀に注いだりします。
【八寸(はっすん)】
海の幸を使った料理と山の幸を使った料理を1種ずつ提供されます。八寸と呼ばれる四角いお盆の対角に、料理が配置されます。お酒と一緒にいただくのが基本です。
湯桶(ゆとう)・香の物
湯桶と香の物は、懐石料理の締めくくりです。香の物が出るので、湯桶の味付けを薄味にすることで調和が取れます。香の物は、基本として3種類提供されます。
湯桶とは、釜の底に残ったお米を弱火できつね色にこがし、熱湯をそそいで塩味を薄くつけたものです。他の作り方として、お米を炒って香ばしい香りを立たせ、お湯を注いで煮立てる方法もあります。ここでは、香の物で出される漬物のレシピをご紹介します。
なすとみょうがの漬物
なすとみょうがを使った漬物のレシピです。酢の入った漬け汁でみょうがを漬けると鮮やかな色を楽しめます。漬け汁に昆布茶を加えることで、味わい深く仕上がりますよ。
甘酒べったら漬け
材料を混ぜて1日置くだけで作れるべったら漬けです。甘酒の甘さと刻み昆布の旨味が塩によって引き立ちます。定番の大根だけでなく、かぶやにんじんなどさまざまな食材で試してみるのもおすすめです。
きゅうりのしょうゆ漬け
きゅうりのパリパリとした食感がクセになるしょうゆ漬けのレシピです。唐辛子のピリッとした辛さが食欲をそそります。調味液を鍋で熱し、熱いままきゅうりにかけることで、味がよく染み込みます。
【菓子・茶】
懐石料理を最後まで楽しんだら、菓子とともに茶が提供されます。今でも食後のデザートとして甘いものを食べる習慣がありますが、茶の湯では菓子と一緒にいただく茶がメインです。定番の和菓子のレシピを見てみましょう。
練り切り
お花の形が可愛らしい練り切りのレシピです。練り切りとは、求肥とあんこを使った、上生菓子の一種です。桜や梅など季節に合ったお花を表現してみるのはいかがでしょうか。
葛饅頭
葛粉と蒸し器を使って作る本格的な葛饅頭のレシピです。すりガラスのように半透明の生地からあんこが透けて見える、涼しげな一品です。生地が温かいうちにあんこを包むのがきれいに仕上げるポイントです。
懐石料理を味わってみよう
この記事では、懐石料理について解説しました。懐石料理の基本は一汁三菜で、四季折々の旬の食材が使用されます。非常に美しい見た目をしていて、美味しいものを少しずつ味わえます。
今回は、懐石料理の種類ごとにレシピもご紹介しました。気軽に食べに行くのが難しい場合は、ご自宅で旬の食材を使って料理を作ってみるのはいかがでしょうか。今回ご紹介したレシピは、手軽に作れるものばかりなので、ぜひ試してみてください。