【おせちの種類とその意味とは?】徹底解説&レシピ紹介も!
作成日: 2022/12/13
更新日: 2022/12/20
お正月に食べる「おせち料理」は、黒豆や田作り、たたきごぼうなど、さまざまな種類のおかずを重箱に盛り付けたものです。ところで、おせち料理には、どのような種類があるのかご存じでしょうか。また、それぞれの料理や材料となる具材には、意味や願いが込められています。
この記事では、おせち料理の種類や、それぞれの具の意味、また重箱の順番の意味についてもご紹介します。ぜひ参考にしてください。
おせちとは
おせちとは、お正月に食べる料理のことです。「おせち」は暦の上での節句を指し、季節の変わり目に祝いごとを行う「節(せち)の日」に食べる料理を言います。平安時代では、朝廷で季節の変わり目や正月などの5つの区切りに「五節会(ごせちえ)」が開催され、料理が用意されていました。
この風習が、江戸時代に入ってから庶民に広まり、お正月に食べる料理を「おせち」と呼ぶようになったと言われています。おせち料理の内容は全国で同じではなく、地域によって入っている料理が違うことも特徴です。
おせちの種類と意味
おせち料理の種類は、大きく分けて5種類あります。「祝い肴」「口取り」「焼き物」「酢の物」「煮物」に使われる具材には、それぞれおめでたい意味が込められています。
祝い肴
祝い肴とは、お祝いの場で酒の肴として出される料理です。関東では「数の子」「黒豆」「手作り」が、関西では「数の子」「黒豆」「たたきごぼう」が一般的と言われています。
黒豆
黒豆には、「まめに働けるように」「元気で働けるように」という意味だけでなく、「黒く日に焼けるまで朗らかに働けるように」という願いが込められています。
黒色は邪気を払う色とされ、縁起が良いとされています。ふっくらとした柔らかい食感と、甘い味つけが特徴です。
数の子
数の子の原料となるニシンの卵は、塩漬けや乾燥させたものが一般的です。塩抜きしたり、水で戻したりしてから、かつおだしベースの調味料に漬けこんで味を馴染ませます。プチプチっとした食感と出汁の染みた味わいが魅力です。
数の子には「子だくさん」「子孫繁栄」の意味だけでなく、「ニシン(二親)」にかけて、親が健康に過ごせるように、長生きできるようにという願いも込められています。
田作り(ごまめ)
田作り(ごまめ)の材料は、カタクチイワシの稚魚です。田作りは、「豊作」を意味します。昔からイワシは畑の肥料として使われており、「肥料をたっぷり使うことで豊作になる」と言われていることに由来します。
尾頭付きの魚を使っていることから、縁起の良い一品として扱われていることが特徴です。香ばしいいりこの風味と甘辛い味わいが楽しめます。
たたきごぼう
細く切ったごぼうをすりこぎなどで叩いた後、茹でて味つけしたものが、たたきごぼうです。たたきごぼうは、関西で食べられることが多い料理です。
「家族や家業が地に根付いて繁栄する」ことを願う料理で、その意味は、ごぼうがしっかりと根を張っている様子に由来しています。ごぼうの歯ごたえと、酢で和えたさっぱりとした口当たりが特徴です。
口取り
口取りとは「口取り肴」のことで、酒の肴を意味します。「かまぼこ」や「伊達巻」、「栗きんとん」など、見た目や彩りが華やかで、甘みのある味つけのものが多く見られるのが特徴です。お祝いごとでは最初に提供されます。
かまぼこ
その半月のような形が、元旦の「初日の出」のようだとされます。紅白かまぼこの、赤色は「慶び」「魔除け」を意味し、白色は「神聖」「清浄」を表します。
プリッとした食感とあっさりとした味わいが特徴で、箸休めとしてもおすすめです。
伊達巻
伊達巻は、クルクルと巻いた渦巻き状の形が巻物を連想させるとされ、「学業成就」を意味します。伊達巻が生まれたとされる長崎県では、「カステラかまぼこ」とも呼ばれます。
江戸時代に、「伊達もの」と呼ばれていたお洒落な若者が着ていた着物の柄に似ていることから、「伊達巻」と名付けられたようです。たっぷりの砂糖と魚のすり身を加えた卵焼きで、甘くて柔らかい食感が特徴です。
栗きんとん
栗きんとんは、栗とさつまいもを甘く味付けした料理です。クチナシの実で色付けした鮮やかな黄色が特徴で、その色合いが金塊や小判を連想させること、また山の幸を代表する栗は「勝ち栗」と呼ばれ豊かさの象徴として扱われることから、「金運上昇」を表します。
また「金団」とも書くことから、中国のまんじゅうである「餛飩(こんとん・こんどん)」が名前の由来であるとも言われています。
昆布巻き
昆布巻きには、「よろこぶ」や「子生」など縁起の良い字が当てられ、不老長寿や子孫繁栄の願いが込められています。また、昆布は別名「広布(ひろめ)」とも呼ばれ、結婚式の「お披露目」は、この呼び方に由来すると言われています。
昆布巻きは、乾燥ニシンなどの魚を昆布で巻いた料理で、魚の旨みと昆布のまろやかな味わいが特徴です。
錦卵(錦玉子)
錦卵は、茹で卵を黄身と白身に分けて裏ごしして成形し、蒸して仕上げた料理です。黄色と白色のコントラストが鮮やかで、その見た目が2色で美しい模様を作る絹織物(錦)を表していると言われています。
また「2色」と「錦」の言葉がかけられており、金運上昇の意味があります。錦卵は柔らかいふわふわっとした食感が特徴です。
焼き物
ここからは、焼き物に使われる魚の種類についてご紹介します。お祝いごとの定番である「鯛」だけでなく「鰤」や「海老」など、さまざまな魚の焼き物について見ていきましょう。
鯛(タイ)
鯛は、七福神の恵比寿様が持っている魚ということから、「めでたい」とされ縁起の良い魚です。おせちには、切り身の焼き物にして入れることが多いでしょう。鯛は赤色で姿かたちも美しいことから、おせち料理だけでなく、お食い初めなどのお祝い膳など、さまざまなお祝いごとに使われています。
鰤(ブリ)
鰤は、成長するとともに名前が変化する「出世魚」として知られています。出世魚は立身出世を願うために、一年のはじめに食べるとよいとされる魚です。
鰤の名前の変化は、関東では「ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ」、関西では「ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ」と地域によって異なります。脂がのったブリは濃厚な味わいが特徴で、おせちには照り焼きにして盛りつけられます。
海老(エビ)
海老は、長く伸びた髭や体が曲がっている様子から、「腰が曲がるほど長生きするように」という願いが込められています。
また、目が飛び出ている様子から「めでたい」という意味が、脱皮を繰り返すことから「生まれ変わり」を表現しています。殻付きの海老を、甘めの煮汁で煮た「旨煮」は、プリっとした食感と旨みが味わえる一品です。
蛤(ハマグリ)
貝殻がぴったりと対になる様子から「良縁」を表すのが、蛤です。アワビやトコブシが使われる場合もあります。アワビは寿命が15年から20年と長いため、「不老長寿」を意味します。
アワビよりもひと回り小さめのトコブシには、「フクダメ」という別名があることから、「福がたまるように」との願いが込められていることも特徴です。蛤の出汁と甘めの味付けで煮た「煮蛤」は、柔らかい食感と上品な味わいが楽しめます。
酢の物
ここからは、おせちに盛りつけられる「酢の物」についてご紹介します。酢の物として入れられるのは「紅白なます」や「酢れんこん」などです。詳しく見ていきましょう。
紅白なます
紅白なますは、千切りにした人参と大根の酢の物です。根菜を使うことから、「何事もしっかりと根を張るように」との願いも込められています。
また、人参の赤みがかった色と大根の白色が、お祝いごとで使われる「水引(みずひき)」を連想させることから「めでたい」料理とされます。人参と大根のシャキシャキとした歯ごたえがよく、さっぱりとした味わいです。
酢れんこん(酢蓮)
れんこんは穴から先を見通せることから、「この先、見通しが良くなりますように」という願いが込められています。甘酢などの調味料を馴染ませた酢れんこんは、サクッとした食感とさっぱりとした味わいが特徴です。
菊花かぶ
菊花かぶは、菊の形に飾り切りしたかぶを甘酢に漬けた料理です。赤く染めたかぶを使って、縁起が良いとされる「紅白」を表す場合もあります。華やかな菊花かぶはおせちに入れられるだけでなく、お祝いごとにも使われ、めでたさや繁栄、健康を意味します。
煮しめ(煮物)
ここからは、煮しめ(煮物)の種類についてご紹介します。煮しめには、定番の「筑前煮」や「手綱こんにゃく」だけでなく、「くわい」や「里芋」などの根菜の煮物も含まれます。
筑前煮
おせちに入れる筑前煮は、れんこんや人参、ごぼうなど根菜と鶏肉を煮込んだ料理です。さまざまな具材をひとつの鍋で煮ることから、「家族が仲良く暮らせるように」との願いが込められています。鶏肉の旨みが染みこんだ根菜が絶品で、ご飯にも合う味付けが特徴です。
手綱こんにゃく
こんにゃくに切り込みを入れてねじりを加えて飾り切りにしてから、甘辛い味つけで煮込んだ料理です。手綱こんにゃくには、「心を引き締める」という意味があり、結び目は良縁や夫婦円満を表します。プリっとした食感と、味が染みこんだこんにゃくがクセになる味わいです。
くわい
芽が突き出た「くわい」には、「芽出たい(めでたい)」という縁起の良い意味があります。また、芽が空に向かってまっすぐ伸びている様子から、「立身出世」の願いも込められています。角型や八角形にカットされたものは、その形が「長生き」を象徴する亀に似ていることから縁起が良いとされます。
里芋
煮しめとしても食べられる「里芋」は、ひとつの種芋から多くの子芋や孫芋が実ることから、「子孫繁栄」を表します。また、里芋の丸い形から円満が連想され、「家族円満」の象徴でもあります。里芋の煮しめは、ねっとりとした食感と甘辛い味つけが味わい深い一品です。
たけのこ
たけのこは、その姿が天に向かって伸びていくことから、「立身出世」の願いが込められた食材です。たけのこがまっすぐに、すくすくと成長していく様子は、「幸運を伸ばす」という意味も連想されます。
おせちには土佐煮にして盛りつけられることが多く、たけのこのサクッとした食感とたっぷり加えた鰹節、鰹だしの風味が特徴です。
重箱の順番
おせち料理は、重箱に盛りつけることが特徴です。段を重ねる重箱に詰めることから、「幸福を重ねる」という意味があると言われています。また、その重箱に詰める理由としては、正月三が日分の大量の料理を保存しやすい、重箱に詰めることでホコリから料理を守りやすいという利便性もあげられるでしょう。
重箱には、重ねられる段の数によってさまざまな種類がありますが、三段重でも五段重でも、一の重には「祝い肴」を詰めます。それ以外の段に詰める料理は、お重の数によって異なることが特徴です。ここからは、三段重と四段重、そして五段重の詰め方について見ていきましょう。
三段重の詰め方
重箱は、上から下の段に向かって「一の重」、「二の重」、「三の重」と数えます。三段重の、一の重には黒豆や数の子など「祝い肴」と、かまぼこや昆布巻きなど「口取り」を詰めましょう。
二の重に入れるのは、紅白なますや酢れんこんなどの「酢の物」や、鰤や海老、鯛などの「焼き物」です。次の三の重には筑前煮などの「煮しめ(煮物)」を詰めます。
四段重の詰め方
次に四段重の詰め方を見ていきましょう。四の重の「四」は、「死」を連想させ縁起が良くないとされるため、字を変えて「与の重」と呼ばれます。
まず、一の重には、三段重と同じように「祝い肴」や「口取り」を詰めましょう。二の重に詰めるのは「焼き物」、三の重には「酢の物」です。さらに、与の重には「煮しめ(煮物)」を詰めます。
五段重の詰め方
五段重では四段重と同じように、一の重には「祝い肴」や「口取り」、二の重には「焼き物」、三の重には「酢の物」、そして与の重には「煮物」を詰めます。そして五の重には、何も詰めずに空にしておきましょう。
空にしておくのは、神様からの福を詰めるためという理由があります。五の重を空にしておいて将来の福を詰める余裕を残しておくという意味合いから、五の重は「控えの重」と呼ばれることもあるようです。
DELISH KITCHENのおせちレシピ
ここからは、ご自宅で作れるおせち料理の本格レシピをご紹介します。本格的なレシピではありますが、中には電子レンジで簡単に作る方法を紹介しているレシピもあるので、ぜひ参考にしてください。
祝い肴のレシピ
まずは、祝い肴のレシピをご紹介します。ここで載せているのは、「黒豆」や「味付き数の子」、「田作り」などの作り方です。
黒豆の煮方
ふっくらと甘い黒豆をご自宅で作ってみましょう。難しいイメージのある煮豆も、コツを抑えることで上手に炊き上げられます。黒豆は鉄鍋や鉄玉を加えて煮ることで、より黒くツヤよく仕上がります。ぜひお試しください。
味付き数の子
おせち料理の定番、味付き数の子のご紹介です。塩蔵数の子を塩抜きしてから、じっくりと調味料に漬け込むことで、味が染みこんだ美味しい数の子が作れます。お好みにより、調味料の甘さと塩分を調整しましょう。
基本の田作り
香ばしい風味が魅力の田作りも「祝い肴」のひとつです。甘い調味料を絡めた田作りは、思わず箸が止まらなくなる美味しさです。材料のごまめは、しっかりと乾煎りして水分を飛ばすことで、より風味よく仕上がります。
たたきごぼう
関西の「祝い肴」のひとつ、たたきごぼうを作ってみましょう。綿棒でごぼうを叩いてから調味料に漬け込むことで、しっかりと味が染みて美味しく仕上がります。コリコリとした食感が魅力なので、ぜひ味わってみましょう。
口取りのレシピ
続いて、おせちの「口取り」のレシピをご紹介します。「かまぼこの飾り切り」や「伊達巻」、「栗きんとん」、「昆布巻き」などのレシピを載せているので、ぜひ参考にしてください。
かまぼこの飾り切り(市松)
簡単に作れるかまぼこの飾り切りです。縦半分にカットした紅白のかまぼこを、交互に並べるだけで鮮やかな市松模様になります。難しい手法は必要ないのに、お重が華やかになる飾り切りです。
かまぼこの飾り切り3選
赤いかまぼこを使って、華やかな飾り切りにチャレンジしてみませんか。「あやめ」「松葉」「日の出」の3種類の飾り切りをご紹介しています。おせちだけでなく、お食い初めなどのお祝い膳にもおすすめです。
フライパン伊達巻
甘くてふわふわの食感が魅力の伊達巻を、フライパンで作ってみましょう。魚のすり身の代わりに、はんぺんを使えば手軽に作れます。フライパンで両面を焼いたら、巻きすやラップを使って巻けば完成です。
本格栗きんとん
クチナシの実で色付けする、鮮やかな色あいの本格的な栗きんとんです。ほんのり甘く煮たさつまいもと、栗の甘露煮の食感の違いが楽しめます。裏ごししたさつまいもの滑らかな食感がたまりません。
昆布巻き
旨みたっぷりの昆布巻きは、「口取り」のひとつです。乾燥昆布は煮込むうちにかさが増えるので、かんぴょうは余裕を持たせて、ゆるめに巻きましょう。しっかり冷ましてから食べると味が染みこんで美味しく食べられます。
錦卵
黄色と白色が色鮮やかな錦卵を作ってみましょう。裏ごしして滑らかに仕上げた錦卵はほんのり甘く、大人だけでなく子どもにも喜ばれます。お重に盛りつけるだけで、パッと華やかになる一品です。
焼き物のレシピ
ここからは、「鰤の照り焼き」など「焼き物」レシピをご紹介します。
ふっくらブリの照り焼き
脂がのった鰤を旨みたっぷりの照り焼きにしましょう。焼いた後に煮ることで、身が硬くならずにふっくらとした食感に仕上がります。甘辛い味付けで煮た鰤は、ついついクセになる美味しさです。ぜひお試しください。
車えびのつや煮
新鮮な活き車海老を使ったつや煮のご紹介です。甘めの煮汁が染みこんだ車海老は、ツヤツヤとした見た目とプリっとした食感が魅力です。お頭付きの海老を盛り付けると、お重がいっそう豪華な見た目になります。
酢の物のレシピ
「酢の物」からは、定番の「紅白なます」や「酢れんこん」、「菊花かぶ」のレシピをご紹介します。
紅白なます
人参の赤色と大根の白色の組み合わせが縁起のよい、紅白なますを作ってみましょう。シャキシャキとした食感と甘酢のさっぱりとした味わいが、後引く味わいです。箸休めとしてもおすすめなので、ぜひお試しください。
酢れんこん(酢蓮)
サクッとした食感とさわやかな酸味が特徴の酢れんこんです。電子レンジを使うと、より簡単に作れます。おせち料理としてだけでなく、焼き物やちらし寿司に添えるなど、幅広く使えます。ぜひ活用してみてください。
菊花かぶ
見た目も華やかな菊花かぶのご紹介です。かぶの白さに輪切りにした唐辛子の赤色がコントラストになり、見映えがします。先に塩水につけて水分を除いてから調味料に漬けることで、味が染みこみやすくなります。
煮しめ(煮物)のレシピ
ここからは、煮しめ(煮物)のレシピを2つご紹介します。
基本の煮しめ
おせちに欠かせない煮しめをご自宅で作ってみましょう。干しシイタケや里芋、ごぼうなどそれぞれの下処理をすることで、より美しい出来上がりになります。人参と絹さやは、別の手順で仕上げると彩り鮮やかです。
基本の筑前煮
鶏肉の旨みが具材に馴染んで味わい深い、筑前煮のご紹介です。炒めてから煮込んだ具材に、甘辛い味付けが染みこんで、箸が止まらなくなる美味しさです。ご飯のおかずにもおすすめなので、ぜひお試しください。
伝統あるおせち料理をご自宅で作ってみよう!
お正月に食べられるおせち料理は、「祝い肴」「口取り」「焼き物」「酢の物」「煮物」の5種類に大きく分けられ、使われる食材にそれぞれ意味が込められています。またおせち料理の重箱には、三段重や四段重、五段重がありますが、段の数によって盛りつける料理が決まっています。
本格的なおせち料理をご自宅で作るのもおすすめです。本格的な作り方ではありますが、コツを抑えれば意外と簡単にお作りいただけます。ぜひ、ご紹介したレシピを参考におせち料理を楽しんでみましょう。